- イチローから学ぶ「いろいろ試し、明日は今日と違う自分になる」
- 室伏広治から学ぶ「新しいことをやり続けてモチベーションを高める」
- 為末大さんから学ぶ「成功者の真似だけでは成功できない」
- 誰でもできる「アイディアを生み出す方法」
- 難しいことは考えずとにかく試しまくってみよう
ビジネス本としてはかなり有名なこの本
「仕事は楽しいかね?」
この本のポイントを一言で言ってしまえば
「とにかく何でも試してみよう」ということです。
今では似たようなことを書いている本もだいぶ増えましたが、それでもこの本が類似内容の本よりも優れているなと思うのは、「試す」という言葉を選んでいるところです。
同じようなことを書いている本が使う言葉は大抵「挑戦」です。
「たくさんのことを試そう」と言うのと
「たくさん挑戦しよう」では印象がだいぶ違います。
「たくさん試す」は、日々自分ができる範囲のちょっとしたことがメインです。
「たくさん挑戦する」は、自分の限界の少し先に体当たりしていくイメージです。
どちらも「毎日新しいことをやり続けよう」という点では一緒ですが、その重さが違います。
成功した起業家やスポーツ選手などが著書や、テレビ・雑誌のインタビューで
「成功の秘訣は失敗を恐れずに挑戦し続けることです。」
なんていうようなことをよく語りますし、その通りだと思うのですが、実際その成功者たちも普段やっていることのほとんどは同じことの繰り返しです。
愚直で泥臭い繰り返しの日々です。
そしてその中にちょっとした「試し」を入れていきます。
挑戦とまでいかない本当のお試しです。
そして、たまに勝負所になると挑戦を入れていきます。
なので、実際はルーティン90%、「試し」が9%、「挑戦」は1%くらいではないでしょうか。
実は「挑戦」以上に、この「試し」の部分が一流と二流を大きく分けるポイントなのではないかと僕は感じています。
イチローから学ぶ「いろいろ試し、明日は今日と違う自分になる」
例えば、イチロー選手の発言からも大きな挑戦より日々の小さな「試し」が重要だと思わせる部分があります。
4,000のヒットを打つには、8,000回以上は悔しい思いをしてきているんですよ。それと常に、自分なりに向き合ってきたことの事実はあるので、誇れるとしたらそこじゃないかと思います。失敗を自分の中に刻み込んで行く行為。その中で出して行く結果。それを重ねて行く。今まで自分を支えてきたものというのは、よい結果ではないんです。それなりの屈辱によって、自分を支えてきたんです。
20年、トータルで毎日プレイするようになってから、言えることは、打撃の技術に最終的な形はないということです。これが残酷なところなんです、打つということの。だから前に進もうとする意欲も生まれてくるとも言えるんですけど。時に技術は後退することもあります。本当は後退したくない。ずっと前に進んでいきたい。でも、なかなかそうはいかないんです。はっきりしているのは、近道はないということです。ある自分のぼんやりとした理想に近づくいちばんの方法は、遠回りをすることだと、今ははっきり言えます。
イチロー(2013年12月16日放送)| これまでの放送 | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀
この言葉からは、常に小さな修正と失敗を繰り返しながら試行錯誤している姿が浮かんできます。
その試行回数はかなりの数になります。
それがある時大きな結果となって現れる。
第三者から見ていると、挑戦部分だけが目につきやすいですよね。
バッティングフォームを大幅に変更した時とか、所属が変わったときとか、コーチなどのメンターが変わったとか。
でも実際は毎日たくさんの小さな「試し」をやり続けている。
その小さな実験の繰り返しの中で偶然生まれたものが大きな挑戦につながっていく。
それがほかの人たちの目に見える形になったときには大きな変化に見えているのでしょう。
室伏広治から学ぶ「新しいことをやり続けてモチベーションを高める」
イチロー選手や室伏広治さんのように、もうこれ以上ないというところまで達してしまった人たちに限らず、すべてのアスリートに必ず訪れるのが「モチベーションの低下」です。
特に陸上競技は、僕も短距離を10年近くやっていましたが、一般的な陸上競技の練習はほとんどが地味な作業になります。
しかも長く競技生活をしていると、なかなか記録が出ない時期の方が長いので、モチベーションの維持は重要課題です。
室伏広治さんはかなり変わった独自のトレーニング方法を次々と取り入れることで有名です。
これについて、北京五輪のリレーで銅メダリストになった朝原宣治さんがこのように分析しています。
私はもう、そっち(精神面での疲れ)のほうが、肉体疲労よりも精神疲労のほうが問題というかね、大きな問題なんじゃないかなと思います。
というのは、やはりモチベーションというのが選手を支えてますので、じゃあ次行くのに、どういう気持ちで、どういう目標を持っていこうっていうのは、ものすごい大きなところで、そこに体を動かそうと思ったら、心が動かないと、向かっていけないですよね。
なので、室伏君というのは、もう金メダリストですしね、そこに向かう方法というのを、精神的にも充実するような方法っていうのが、多分分かってるんじゃないかなと思います。若いころはね、何してても興奮することもありますし、大きな大会が近づいてくると、自然とね、ワクワクするもんなんですけど、それが繰り返し繰り返し、世界選手権何回も出たり、オリンピック何回も出ると、ちょっとやそっとじゃ興奮しなくなったり、トレーニングに対しても、もうマンネリ化してしまうと、あまり力が出せないという状況になりますね。
でも、室伏君はやはり、新しいものをどんどん取り入れて、自分を高める方法をね、模索しているというところに、モチベーションの秘けつといいますかね、あるんじゃないかなと思います。
「仕事は楽しいかね?」でも
「いろいろ試し、新しいことを始める、その楽しさは格別」と言っています。
結果が出るかどうかはいろいろな要因に左右されるので結果だけでモチベーションを維持し続けるのは難しいですが、日々いろいろな試しを繰り返していくのは自分次第です。
鉄人室伏広治さんですら勝手にモチベーションを湧かせることは難しいのだから、普通の人たちはなおさら日々様々なことをたくさん試していくということが最重要になりそうです。
為末大さんから学ぶ「成功者の真似だけでは成功できない」
「仕事は楽しいかね?」では、過去の成功者の真似をしていては成功することはできない、というようなことも書かれています。
成功というのはいろいろなことを試した結果、偶然生み出されたものである場合が多いものです。
だけど人間というのは自分の力でこのように成功した、というのを理屈として説明したがります。
その言葉を鵜呑みにしてそのまま真似をしても成功はできないということです。
成功者がきちんと成功への道筋を正しく語っている場合もあります。
でもその方法がほかの人にも当てはまるとは限りません。
しかも、成功者が語った方法は多くの人が真似をするので、過当競争が起きます。
これでは逆に成功から遠のくことになってしまいます。
400mハードルのメダリストである為末大さんもこのように語っています。
やってみて、課題を見つけ、解決に向かって練習することをとにかく繰り返していました。いわゆるPDCAを回すということですね。陸上の個人競技は他の選手が成績に関与する要素が少ないので、いかにビジョンを持ち、意思決定ができるかが重要な鍵なんです。
例えば、アスリートが最初にビジョンを持とうとすると、子どもが『王様』とか『お姫様』を目指すように、『イチロー』目指してしまうと思います。
しかし、その人の生まれ持った特性上、必ずしも目指すべきビジョンとして『イチロー』が良いとは限りません。これは諦めるとは違います。自分に与えられた骨格や性格、身体能力からよりリアルなビジョンを形成することが大事なんです。自分のことをより冷静に判断して、夢の実現への近道をイメージすることが大事です。僕の場合は、体が小さく、足の回転数があまり早い方ではないのですが、ストライド(歩幅)が出やすく、バランス感覚が整っているという特性がありました。そこで、最終的な走り方のビジョンとして、地面を踏んでいる時間が少ない方法を考えました。良く河原でやる、石を水面で水切りした時のようなイメージを目指しながらトレーニングをしていました。
課題の発見では、自分の走りを数値化・可視化をして統計的にアプローチしました。
400mハードルではハードルの間が9区間あります。
自分のタイムを区間ごとに区切って数値化しグラフにすることで、自分はどこでスピードが落ちやすいのか確認しました。当初は、スタートに課題があると思い、スタートを改善したのですが、スタート区間のスピードは上がるものの、全体タイムの改善にはつながりませんでした。
そのあと、体型が僕と似ている世界の数人の選手を比較すると、統計的にみんな同じエリアでタイムが落ちやすいということが分かってきました。そこで、ひと冬の間、ずっとその特定の部分のタイムを短くするトレーニングをしました。
こういったトレーニング方法により、最終的には全体のタイムが縮まり、結果につながりました。
為末大さんは競技人生の長い時間を結果がまったく出せずにもがいて過ごしていました。
僕も当時、結果が出なくてグレてしまった為末大さんを大会などで見ていたので、まさかそこから世界選手権でメダルを取るまで復活するとは思いもしませんでした。
為末大さんは当時いろんな人からの指導やアドバイスに振り回されていたようでした。
それが、上に書いてあるように自分に合ったトレーニングを試行錯誤して自分だけに合ったトレーニングを繰り返した結果大きく花開きました。
正直なところ、当時為末大さんが行っている独自のトレーニング法を雑誌などで見て、こんなトレーニング意味あるのかな…?と思ったこともありました。
でも結局、そのトレーニングが正しいかどうかではなく、たくさんのトレーニング方法を自分で編み出して試し続けるということが重要だったようです。
誰でもできる「アイディアを生み出す方法」
「仕事は楽しいかね?」では、具体的な方法も書いてあります。
1:問題点を書きだす
思いつく限り書いていきます。問題点を、何か新しいことを試すチャンスだと捉えることで問題は問題でなくなるという効果もあります。
2:仕事上でやったミスを全部書き出す
これ、書き出しているときは死にたくなってきますが、しっかりリストアップし切ると謎のスッキリ感があります。
3:仕事に関してやっているすべてのことをリストアップする
できる限り細かく全てをリストアップしていくのがポイントです。
書き出したリストひとつひとつに対してこんなことを試してみようと考えてみたり、
書き出したものをそれぞれ組み合わせたりしてみることで、今まで見えていなかったいろいろなアイディアが生まれてきます。
これを実際にやってみてある程度アイディアが溜まってくると、今まで漠然と抱えていた仕事への不安が軽くなってモチベーションが上がるのを感じました。
行動力も今のところ上がっています。
難しいことは考えずとにかく試しまくってみよう
今回アスリートを参考にして書いてみましたが、とにかく余計なことを考えずに試してみたい新しいちょっとしたアイディアを試しまくってみると、なんだか目の前がパーッと開けるような感覚になります。
ちなみに、「仕事は楽しいかね?」はすごく良書でしたが、興奮しながら読んだ続編の2冊は全然僕には響いてこなくてがっかりでした。